王子にらんざんという居酒屋がある。
じつは、今日、ここにたどりつくまでに2軒をはしごしてしまった。そして3軒目にしてようやくこのらんざんにたどりつき、有終の美とも言うべきすばらしき居酒屋人生を迎えることができた。
この合計3軒のはしごにはわけがある。
そのわけをじっくり解説しよう。
まず、今日はカツオが食べたかった。
カツオをもとめて妻ちゃんと2人、わざわざ雨の街に繰り出したのだが、店先の看板で「カツオあります」って正々堂々とうたってる店がなかなか見あたらない。
きっともう戻りガツオは終わってしまったのだな、残念残念。と勝手にアキラめて、ならばおいしい生ビールを・・・って、近所のYの滝に入った。あの有名なチェーン店ですね。
この店は隣町川口にあるサッポロビール川口工場から直送された本格派のSAPPORO黒ラベル「生」を飲ませてくれるのだ。しかもご存知の通りとってもお安いY価格。直線距離にしてほんの3キロほどだから、とにかくアタラシクておいしいのです。
アワが生きてるカンジ(はーと)
そこでこの店にとりあえず入ってとりあえず生ビールを注文する。そしてカツオな期待に胸躍らせてツマミ表を見ると、そんな期待むなしくやっぱりカツオはないのですね。
カツオがないならカキ!カキ!ナマガキナマガキ!とツマミ表をまた最初から捜すのだけれど、これもない。つまりは食べたいものがなんにもないということダ。かなり落胆しつつ、そのかわりに新サンマ刺280円というのを頼む。生ビールはおいしいのですよ。そりゃサンマもおいしいっすよ。だけれども期待の2品のそのどちらもない!ってのはかなり残念かつご立腹で、
「 なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?」とつぶやきつつ、給料日前ののお財布状況にしちゃかなりいけない考えがむくむくと頭を持ち上げてきているのですね。
「はしごだ・・・」
おいしい生ビール大ジョッキ1パイ!を飲み終わった頃には、そのいケナイ考えはほとんど確信に近いものになっていて、やにわに向かいで微笑む妻ちゃんの手を引っ張り
「いくぞ!」
と立ち上がると、3000円少々の会計を半ば強引に済ましてまた雨の街に繰り出すのであった。
ここまでいけないことをしてしまったのなら、もうこれはカツオを徹底的に捜すしかないでしょう。
でもやっぱりなかなか無いのですよ。店先に「カツオあります!」とただしく書いてある店は王子の町中歩いても皆無でした。その昔の江戸のマチだったら、
「初ガツオあるよ!ハツガツオ!」
なんて看板がそこかしこにあったのでしょうが、今は平成の時代。しかも江戸のちょんまげどもには縁の無かった戻りガツオとくれば、今日はカツオに会えないかもしれないなぁ。でもね、カキあります!って店を見つけちゃったのですよ。生ガキ。フフ。王子にはやす〜い居酒屋がたくさんあって、こないだアドマチックなんたらの王子版で紹介されてたみたいだけど、そんなやす〜い居酒屋の1軒が「生ガキあります」って看板を出してオイデオイデをしているモンだから、迷わず飛び込みました。2軒目です。
カツオカツオ・・・と呪文のように繰り返しながらメニューを見るが、やはり期待むなしくカツオはない。でもわれわれには生ガキがあるさっ と気を取り直して生ガキを注文。そしてまた生ビールを注文。待つこと5分。あっちの方から、皿に盛られた生ガキが運ばれてきました。皿の上にカラが見えます。カラ付きです。ん〜期待度大でテーブルに置かれた生ガキと対面したとき、
はぁ〜〜〜〜〜〜。
落胆のため息。
なんとそこに置かれた生ガキは、身の大きさアサリほどの通称なんちゃって生ガキ。
はぁ〜〜〜〜〜〜〜これじゃあ生あさりだろが!こちとら15万アクセスのWeb持ちだぞ!実名報道しちゃうぞ!こんちくしょう!こんちくしょう!なんてジメジメしながら我が運の悪さ、引きの弱さを実感しつつ、そのなんちゃって生ガキをズルズル食べたのでした。こーゆーときは気持ちが沈んでるから、おいしく感じないのね。このままでは今日の1日が最低の悲しい1日になってしまう。我が人生における生ガキと戻りガツオは確実にあきらめの道を突き進んでいる。逃げるのか?Novよ。逃げたまま終わるのか・・・・??
そのなんちゃって生ガキを食べ終わる頃、ボクの頭の中には、またまた給料日前のお財布状況にしちゃかなりいけない考えが、むくむくと頭を持ち上げてきているのですね。
「はしごだ・・・」
こうなりゃ2軒も3軒も同じコト。
生ビールを飲み終わるやいなや、向かいでひきつる妻ちゃんの手を引っ張り「いくぞ!」と立ち上がると、3000円少々の会計を半ば強引に済ましてまたまた雨の街に繰り出すのであった。
もう行くところはアソコしかない。
らんざん
ココはちょっと高いのね。
でもネ、さっき外からちょこっと覗いたとき、生ガキが見えた気がするのです。
たとえ生ガキがあっても値段が高いから、はじめから候補から外していた。というのもある。
でもネ、ここまで悲しい思いをしてきたならば、最後ぐらいいい思いをしたいと思うのが人情でしょ。
らんざん突入。
そこで我々が見たものは、店奥の「本日のお薦め」ボードにランランと輝く「戻りガツオ刺し」と「から付き生ガキ」の2文字でした。
あるじゃないのあるじゃないの。やっぱりうらぎらないね〜〜らんざんは。はじめからココにくればよかったよ。やっと会えたよカツオに生ガキ。ウッシシシシと半狂乱になってカウンターに着席。店のオヤジに、なまがき1っちょ。かつお1っちょ。と威勢良く頼みました。お飲物は生ビールね。本日6パイメであります。
しばし待ち、我々の元に運ばれてきた物は、ああ、もう一口では食べきれないようなおっきくてセクシーなカキと、とろっとろのトロカツオ。ああ・・・・・。涙が一筋。きょうは君たちを捜していたんだよ。やっと会えたね。もしかして君たちも僕を待っていたのかい?そうだろそうだろ。こんなにうれしいことはないのだよ。もう放さないからねウルウル・・・しばらくのご歓談ののち、カキの一つ目を手に取りました。1つ1つのカキに、ポン酢かな。がかかっていて憎たらしいくらいちょこっとレモンが乗っかってるの。カラごと持ち上げてまず口元に運ぶ。ここからが大事で、この美味しいソースをこぼすことのないよう、口に流し込むときの汁の流れるルートを確認。安易に口に流し込むと口のハシからこぼれることがあるでしょ。そんなことは許されないので、ちょっとだけ傾けてルートを確認するんです。カキの殻は自然の物だから、1つ1つ汁の流れる道筋が違うのですね。そのルートを確認してから、おりゃ!と流し込む。ん〜〜この幸せ。この海の味。ああ、なんともいえないなぁ。カキってどうしてこんなにおいしいんだろう。ビールが進みます。もう1パイ。これで今日7ハイ目。しばらくカキを噛みしめて涙を拭いたあと、次にカツオ刺しを一切れ。これこれ、これですよ。今日はもう会えないかと思ってました。ココにたどり着くまでの時間がとても長く感じたなぁ。もう毎日カツオ料理でもいいなぁ。うれしいなぁうれっしいなぁ・・・今日はもう誰にも会わないモンね!とニンニクをたっぷり。そしてショウガを少々。ネトネトのたれを作ってたっぷり付けてお口の中へ。ん〜〜し・あ・わ・せ。生ビールおかわり!これで8パイメ。
店のマスターはカウンターの内側で、こんなに感激しながら食べる客を見たのは初めてなのか、不思議そうにながめていました。
らんざんよいトコ、一度はオイデ。
実はその帰りにもう1件。
男は飲んだ帰りはラーメンで締めなくっちゃならない!ってことで、ラーメン屋に寄ったのですね。
王子には人様に自慢できるようなラーメン屋が3軒有り、そのうちの1けん、米沢ラーメンを食べて帰りました。さっぱりしてておいしいんだよ。ラーメン談義についてはまた今度。さっきのらんざんはカードで払ったよ。もうお金ないもん。
じゃね。